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閉じる2018年10月に発売された、プロフェッショナル仕様のステージイヤーモニター『IER-M9』。
数々のアーティストからも注目を集め始めている本機のサウンドを、
Mr.Childrenら、多くの実力派ミュージシャンを担当してきたPAエンジニア・廣川光一氏が語る。
コンサート、ミュージカル、式典やイベント等でスピーカーから聴衆に音を届ける、PA=Public Address(大衆伝達)という言葉、そのままですね。そのPAの中でも、ステージ上のアーティストが出している歌声や演奏などの”音”をマイクで集音し、ミキシングコンソールで適切にミックスして、スピーカーから最も適切な形で聴衆に届けるのが私の仕事。さらに、ステージ上のアーティストやミュージシャンに自分の歌声や演奏している音、それらを適切に返してあげる「モニターエンジニア」という仕事も担当しています。
イヤーモニターが使用される以前は、アーティストやミュージシャンはステージ上に置かれたスピーカーモニターで自分達の歌声や演奏を聴いてグルーヴしてました。現在もこの方法を使用している現場ももちろんあります。しかし、コンサート会場が大型化するにつれ、聴衆へ届けるスピーカーもパワーアップされ、ステージへの低音の回り込みによる低音の濁りや、会場の壁や屋根による音の反射が深刻な問題となってきました。モニターエンジニアは、アーティストの装着しているイヤーモニターにそうした回り込みや反射に対応した適切な音を返すことで、彼らがベストなパフォーマンスできるようにする仕事です。
そうですね。耳に深く装着するステージイヤーモニターは、会場の音響環境の影響をさほど受けませんし、ステージ上、どこに行ってもある程度同じ聴こえ方でモニタリングできますから、今ではほとんどのアーティストがステージイヤーモニターを使うようになっています。
当初は演奏のためのツールとして生まれたものなのですが、徐々に音質面も重視されるようになっていき、現在ではクリエイティビティを刺激するようなところにまで到達しています。わかりやすく言うとレコーディングスタジオ的というか……。ステージイヤーモニターは外音を比較的遮断してくれるので、各曲の世界をそれぞれのシーンごとに作ることができるんです。もちろん、それにはステージイヤーモニターの品質や、エンジニアのテクニックも大事なんですけどね。
比較的新しいものでは、2014年に発売された密閉型インナーイヤーレシーバー『XBA-A3』(現在は生産完了)が挙げられます。先ほどもお話したよう、ステージイヤーモニターには遮音性を高めるために密閉性が求められるのですが、現在主流の、耳型を採って樹脂でイヤーピースを作成するカスタムインイヤーモニターの多くは、口を閉じている時はぴったりはまるものの、歌唱時や笑った時に顎関節が動くとわずかに隙間が空き、遮音性が損なわれると同時に、フィット感が損なわれ音質が変化してしまいます。普通に音楽を聴く分には気にならないレベルなのですが、ステージ上で歌うミュージシャンにとっては看過できない問題です。これをどう解決しようか悩んでいたところ、ある日、あるアーティストから、この製品『XBA-A3』を提案されまして……。いろいろ試したところ、カスタムインイヤーモニターよりもこうした製品の方が隙間が空かないことを発見したようなんです。実際、これを耳にギュッと押し込むと、口を開いても隙間ができず、高い遮音性を保ったまま音を聴くことができます。
去年の秋くらいに、一緒に仕事をしている同僚から「ソニーが新しいステージイヤーモニターを出すらしいですよ」と教えてもらいました。なお、PAエンジニアが新しい機材に詳しいのは、最新の機材と技術を駆使することで、アーティストのパフォーマンスを引き出したいという思いがあるからですね。
話を聞いて、これはさっそく試してみたいとソニーに連絡し、『IER-M9』をMr.Childrenの現場で使う試聴機としてお貸し出しいただきました。
第一印象ですが、正直なところ、最初はちょっと違和感があって……。ところが、3曲、4曲とやっていくうちに、あれ、これは良いんじゃないかと思うようになりました。
『XBA-A3』と比べて、音に立体感がありすぎて、これまで耳のそばにギュッと固まっていた音が、フワッと周囲に拡がったようなイメージを持ちました。それによってバンドの音が遠くなってしまったというのが「違和感」の正体だったのかなと。
ゲネプロの際は、私も『IER-M9』で音を聴いていたのですが、ほぼ同じ感想です。ただ、あまりに立体感、解像感が良すぎて、オペレーションしていてとても緊張を強いられました(笑)。
ライブはレコーディングとは異なり、エンジニアの音響操作も当然、リアルタイムでやらなければなりません。その場の空気感に応じて変わるミュージシャンの細かなアプローチに合わせてミキシングコンソールのフェーダーを動かしていくのですが、高精細な『IER-M9』では、そこにこれまで以上に繊細な操作が要求されるんです。
また、ステージイヤーモニターに返す音、主に歌やドラム、アコースティックギターやピアノにはリバーブ(残響効果)を適用しているのですが、曲ごとにそのプログラミングは変えていて、さらに会場の広さに合わせて都度変えたりもしています。それは、その会場の一番奥にちゃんと音が届いていることを感じさせるようなエコー感を出すため。これをまちがえると、自分の声が会場の奥に届いていないのではないかという不安感をアーティストに与えてしまいかねません。その距離感をピタっと合わせるのが私の特技の1つだと思っているのですが、そういったところも『IER-M9』だと、より繊細に感じられるようになり、非常に気を使いました。
はい、実際のパフォーマンスに影響が出ると思います。周囲の演奏だけでなく、自分の息づかいも繊細に聞こえてきますから、シンガーもそこに焦点を当てやすくなるのではないかと考えています。お互い、ちょっとした失敗がはっきり分かってしまうので、怖くもあるのですが、それ故に面白い、やりがいがあるとも思いました。
昨年末、12月23日にツアーの国内ラスト公演が大阪城ホールで行われました。もちろん、全ての公演で全力を尽くしていますが、最終日はアーティスト、スタッフとも、いつも以上に力が入ります。私も、緊張しつつも、より繊細に、アーティストの意気込みに負けないよう大胆にオペレーションを行いました。すると、公演終了後にメンバーからも「今日は特に細かくやってくれましたよね」とねぎらいの言葉をいただくことができて……これも『IER-M9』の効力でしょう!!(笑)
自分自身、それまでは0.5db程度上げ下げしても分からないだろうと思っていたのですが、『IER-M9』導入以降は0.2dbくらいでも分かってもらえるようになった気がしています。
Mr.Childrenは、これに限らず、常に進化を止めないアーティストなので、どこが『IER-M9』のおかげとはなかなか言いにくいのですが、1つ、明らかに変わったなというところがあります。全国ツアーでは、それぞれ会場が異なるため、本番前のリハーサルで、各パートから、PAエンジニアに対して細かな修正要望が入るのが常なのですが、『IER-M9』導入後、メンバーからのリクエストは激減しました。最初からドンピシャなところに入れられるようになったようです。
これまでの環境では、自分以外の楽器が強い音を出したときに、どうしてもそれが耳に直接ガツンと来てしまうことがあったようなのですが、『IER-M9』では音の空間が拡がり、そういったことがなくなったそうです。
まず、大好きなアーティストがステージ上で使っているのと同じイヤホンを使っているというだけで気分が上がりますよね。音質的にも、プロのアーティストがステージ上で感じている解像感の高さで音楽を楽しんでもらえるのは面白い事だと思っています。実は、個人的にハイレゾ対応のウォークマン『NW-ZX300』を愛用しているのですが、これと『IER-M9』の組みあわせはヤバいですね! 私がイヤホンに求めるのは、重低音の効いたふくよかなサウンドなのですが、そうした要望をこれ以上ないくらい満たしてくれています。そして何より、音のリアリティが素晴らしい。試しに、自分がミックスしたライブ音源を聴いてみたのですが、「あれ? 俺、上手くなった?」なんて思ってしまったり(笑)。
もし、アーティストがステージで聴いているサウンドをよりリアルに再現したいのであれば、少し大きめのイヤーピースを選んで、耳に押し込むような形でしっかり装着し、耳にかかるハンガーもしっかりホールドし、そして音量はちょっと大きめに。もちろん、耳を痛めない範囲でですが、こうすることで、『IER-M9』特有の、少し拡がった音場がギュッと凝縮され、より音の世界に没頭できるようになります。アーティストやエンジニアがふだん、こういう音を聞いているのだということを感じていただければと思います。この製品の世界観はぜひ体験してもらいたいですね。
『IER-M9』は久々のソニー製ステージイヤーモニターとして、音質には充分に満足していますが、ステージイヤーモニターとして求められるポイントなどを今後さらに進化させていってほしいと思います。そのために、「プロの現場」の声が必要であればぜひ協力したいと思います。
新しいマルチBAシステムでは、搭載する全てのBAドライバーユニットがそれぞれの役割を持ち、補完し合うことで、IEMとして求められる音質を高いレベルで実現することが可能になりました。
バランスド・アーマチュア・ドライバーを5基(フルレンジ×2+ウーファー+トゥイーター+スーパートゥイーター)搭載。ボーカルや各楽器のバランス、リズムの立ち上がり、これらを正確に把握できる再生能力に加え、スムーズな高音域レスポンスにより演奏の細かいニュアンスを緻密に再現します。更に高い遮音性を備え、ライブステージにおけるモニターに必要な要素を全て詰め込めこんだ音質を実現しました。
トゥイーターの役割を担うBAドライバーユニットの振動板には実用金属中でもっとも比剛性が高く、かつ高い内部損失を誇るマグネシウム合金を採用しました。また、ボイスコイルに伝送効率の高い銀コート銅線を採用し、端子部には金メッキを施すことで、導電性を向上。入力信号に対して忠実に動く振動系が、微小な音をしっかりと捉え、再生します。
インナーハウジング素材には高剛性と高内部損失のマグネシウム合金を使用することで、BAドライバーユニットを堅牢に固定しつつ、不要な振動をおさえ音の透明度を高めます。
各BAドライバーユニットから再生された音は最適化された経路を通ることで、ロスすることなく耳に伝わります。これによりBAドライバーユニットの持つ自然な高音をそのまま聞くことができます。
OFC(OxygenFreeCopper:無酸素銅)の表面に純銀コートを施した、二重構造の導体を採用。信号伝送ロスを最小限に抑え音の劣化を少なくし、なめらかな高音域の再生を実現します。
非磁性体のメッキを施したプラグを採用(ヘッドホン側、機器側)。通常の磁性体メッキのプラグに比べ、電流の流れを阻害しにくいため、よりクリアな音質を実現します。
Φ3.5mmのステレオミニプラグに加え、Φ4.4mmバランス標準プラグを採用したヘッドホンケーブルも付属。ウォークマンやヘッドホンアンプなど、さまざまな機器との接続も可能。JEITAにて新たに規格化されたΦ4.4mmバランス標準プラグに対応している機器となら、より高音質なバランス出力での音楽再生を楽しむ事ができます。
Φ4.4mmのバランス標準プラグを採用し、KIMBER(R)社と協力して開発したケーブルMUC-M12SB1にも対応。Φ4.4mmのヘッドホンバランス端子を採用しているウォークマンNW-WM1Z/NW-WM1AやヘッドホンアンプTA-ZH1ESとバランス接続をすることが可能です。
ネットワーク回路には音質に優れるフィルムコンデンサーを採用。振動や電気的な干渉を限界まで抑えることで、繊細で伸びのある高音を実現します。また、ソニー専用の高音質はんだを採用し、音声信号の伝送ロスを最小限に抑えます。
遮音性を徹底追及した新しい筺体構造により、周囲の騒音を抑制。また同時に音漏れも低減します。背面空間と外気が繋がる経路を、高遮音の観点で最適設計。また、他の箇所が外気に繋がらないよう完全なシーリングが施されています。
装着安定性を考慮し、ハウジングには超軽量金属であるマグネシウム合金を採用。また、軽量かつ剛性が高いので、ハードな使用が想定される環境でも、ハウジングの破損を防ぎます。
従来のアジャストフリーイヤーハンガーの持つ快適で安定した装着性はそのまま、より簡単に素早く装着することが可能になりました。
2種類の硬度のシリコンゴムに独自開発のシリコンフォーム素材を組み合わせた、独自開発のトリプルコンフォートイヤーピースを6サイズ付属。今までにない柔らかさと追従性で、高い遮音性と長時間の快適な装着性を実現します。また、水洗いできるので清潔に使用できます。ハイブリッドイヤーピースは7サイズ同梱し、合計13種類からお選びいただけます。
持ち運び時の衝撃からヘッドホンを守る専用のハードケースを付属。天面には金属パネルを使用し、耐衝撃性を高めています。表面には、耐久性を考慮しポリエステルクロスを採用しています。
ケーブルやハンガーへの負荷を軽減しつつ収納しやすいコンパクトなサイズにまとめます。ハウジング同士の接触を防ぐセパレーションを設け傷つきを防止します。
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